AnDeriensのブログ

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安田早苗「芽が出るプロジェクト 2007〜2010年記録集」レビュー

安田早苗の「芽が出るプロジェクトの記録集」読みました。

僕自身は、去年彼女の活動を知り、作品を見させていただいたり、お話を聞く機会もあり、今回もご恵投いただいたので、お礼も兼ねて紹介をさせていただきます。

安田早苗氏について

安田氏は絵画やリレーショナルアートなどジャンルに囚われず活動する女性芸術家です。

この著作の主題である「芽が出るプロジェクト」は、もともとは2001〜2005年に「種をまくプロジェクト」として行われていたプロジェクトの延長で、安田氏によって2007年以降に行われたプロジェクトです。

安田氏の活動の特徴は、作家一人で作品を完成させていくのではなく、周りの人を巻き込んで作品を作っていくことにあります。

「種をまくプロジェクト」は、植物の種をつけた風船を飛ばし、その風船を拾った人が種を育て、芽が出た姿を絵に描いて送り返してもらうことで作品が完成します。 また、「芽が出るプロジェクト」では、種をまくプロジェクトの際に制作した絵本をもとに、想像力を働かせ参加者に絵を描いてもらうワークショップを行っています。

いずれも、参加の仕方は違えど、安田氏以外の人を制作者として巻き込みつつプロジェクトが進んでいくものです。

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安田早苗氏の活動を象徴するひまわりの種

参加型アート

僕は、個人的な嗜好として、こうした参加型のアートを鑑賞するのが好きです。 実際に参加するとなると緊張してしまうので、できれば見ているだけの方が嬉しいですが、それはさておき、参加型アートには非参加型のアートを単に鑑賞するだけの作品では得られない効果があると思っています。それは、参加者自身が、疑似的ではあれ、芸術家になれるということです。

元々芸術家ではない人が、芸術に参加することの魅力を追求した芸術家がかつていました。イタリアのブルーノ・ムナーリという人です。 彼は、芸術を民衆に、特に子供に対して開かれたものにすることを目指し、ワークショップを開いたり、誰もが芸術作家になれるようにスタンプを使って作品を作ったりすることで、芸術の可能性を開いてきた人でした(本当はもっと色々あるのですが、また改めて書きます)。彼は

技術の可能性というものは、誰もが美的な価値を持つなにかを創造できるようにすること*1

だと考えていたようで、すべての人が制作者になること、表現者になることに価値を見出していました。

特に子供の可能性を広げることに関心を持っていたようで、教育の領域にも活動を広げていたようです。 (彼が編み出した教育技法を特集した番組を以前どこかで見た覚えがあり、それを見たときにとても感動したことを覚えているのですが、検索しても見つからなかったので、再放送を切望しています。)

ブルーノ・ムナーリ

ブルーノ・ムナーリ

芸術と教育の参考に

安田氏もこれまで教員としての経歴もあり、教育者としての一面を持ちます。そして、この「芽が出るプロジェクト」は子供を中心的な対象としてきたという点で、安田氏の教育者としての側面が強く出ている活動だと思います。

もしこれを読んでくださっている方が、何か、子供達の可能性を芸術によって開こうと考えておられるなら、何か参考になることがこの記録集の中にあるかもしれません。きっと、あなたの活動を助けてくれるでしょう。

*1:ブルーノ・ムナーリ展カタログ in 2018年 p.167