Twitterでちょっと流行ってたので乗っかってみました。
6. エドウィン・アボット・アボット『フラットランド』
— あんどぅ (@Anderiens) 2020年3月11日
7. 冨田恭彦『柏木達彦の哲学革命講義』
8. ベルクソン『思考と動くもの』
9. ジル・ドゥルーズ『記号と事件』
10. ドゥルーズ&ガタリ『千のプラトー』#新大学生に勧めたい10冊
せっかくなので、これらについてまとめてみます。
現代に潜む枠組みは何か - 選書の基準
新大学生に何を勧めたいか。この選書のポイントはなにか。
私たちを取り巻いている大きな枠組みを知ることのでき、そうした知識をベースにして、自らの考え方を相対化できるようになって欲しいと思い、選びました。
大学での勉強は、最初は教養を学び、年を経るたびに専門性が高くなっていくのが通例です。
よく、バケツに石を入れるなどの例え話が使われますが、なるべく早い段階で、大きなスケールの知識を持っておくことは、その後の判断や、嗜好に大きく影響を与えます。
ですので、まずは大きな流れ、源流となっているものを、選んだつもりです。
学問のほとんどは西洋知に基づいている
もう一点、現代の大学で学べる科目や、体系的な知識は、基本的には古代ギリシャの頃から続く、西洋の知がベースになっています。そして、その中でも特に、デカルトの頃から始まる近代以降の知が現代を支配していると言っても過言ではありません。
近代は終わった、ポストモダンやポスト・ポストモダンだと言われることもありますが、それらも近代知をベースにした上で、それらの否定として位置付けられます。
こうした西洋的な知の構造は、学問のためだけに役立つわけではありません。Yahoo JAPANやアウディのマーケターとして知られる井上大輔氏は、グローバルな文化を理解し、日本と世界の違いを理解するのにこうした西洋的な知のあり方(弁証法)を知ることの意味を書いています。
ここで紹介するのは、弁証法よりもさらに大きな、確実性への信頼とその変遷、原子論、あるいは観念論、知識そのものの成立の仕方を問う認識論に関わるものばかりです。
おそらく一般的に大学の教養課程等で勧められる物とは大きく異なるとは思いますが、そうしたものは大学で学べばいいと思いますし、僕が勧める必要はないと思います。
僕は、僕の独断と偏見の上で、僕の読書生活のなかで見出された流れをこの10冊で少し紹介できればと思う次第です。
おすすめの10冊
1. デカルト『方法序説』
ツイッターでは間違えて『省察』選んじゃってました、テヘペロ。『省察』は『方法序説』に対する質疑応答まとめでした。
さて、『方法序説』はかの有名な「我思うゆえに我あり」の書です。
そして、この本で大事なのは、「明晰判明」なことだけを真としたことです。近代の知は、この命題との戦いだと思います。それは本当に明晰判明なのか、あるいは、本当に明晰判明ではいことを正しいと判断してはならないのか。

- 作者:ルネ・デカルト
- 発売日: 2010/08/09
- メディア: 文庫
2. ルクレティウス『物の本質について』
3. スティーブン・グリーンブラット『1417年、その一冊がすべてを変えた』
詩としても名高く、またエピクロスの原子論を伝える書として有名な一冊。 マルクスも初期の論考でデモクリトスとエピクロスの原子論の比較を扱っている。
『1417年、その一冊がすべてを変えた』の方は、この『物の本質について』が1417年に再発見された際のドキュメンタリー。この『物の本質について』の発見によって、近代の科学が始まったといっても過言ではないくらい、歴史的なだし、重要な書です。

- 作者:ルクレーティウス
- 発売日: 1961/08/25
- メディア: 文庫

- 作者:スティーヴン グリーンブラット
- 発売日: 2012/11/01
- メディア: 単行本
4. イアン・ハッキング『確率の出現』
デカルト的な「確実性」の知に対して、蓋然性/確率によっておよそ正しいと言える中で決定を下す「蓋然性/確率」の知というものがあります。特に近年は、機械学習や統計的知識の地位がこれ以上ないくらいに上がってきていて、それは完全に「蓋然性/確率」の知が強くなってきているのだということを示しているのだと思います。
そうした、確率という概念がどういう歴史で成立してきたかを追い直す書です。読み物としてもおもしろいです。
5. 結城浩『数学ガール ゲーデルの不完全性定理』
不完全性定理とは、無矛盾な理論体系は自身が無矛盾であることを証明できないとする定理。つまり、じぶんと異質なものしかじぶんの完全さを示せない、他者との関係が必要だということを示している定理だと解釈しています。
ゲーデル数という数の表し方も世界の見方を変えると思います。

数学ガール/ゲーデルの不完全性定理 (数学ガールシリーズ 3)
- 作者:結城 浩
- 発売日: 2009/10/24
- メディア: 単行本
6. エドウィン・アボット・アボット『フラットランド』
二次元に住む主人公が三次元の世界の存在を周りに伝えようとする物語。 いま自分たちが住んでいる世界は、空間+時間の四次元だとされますが、それも本当はぼくらに見えてない次元があるのかもしれないと思わされます。

- 作者:エドウィン・アボット・アボット
- 発売日: 2009/03/19
- メディア: 単行本
世界が11次元だとする物理学における超ひも理論については、『エレガントな宇宙』がおもしろいです。

- 作者:ブライアン グリーン
- 発売日: 2001/12/01
- メディア: 単行本
また第五の次元を描いたクリストファー・ノーラン監督の『インターステラー』もおもしろいです。ただの宇宙旅行映画じゃないです。
![インターステラー [Blu-ray] インターステラー [Blu-ray]](https://m.media-amazon.com/images/I/51fRRLlTW4L._SL160_.jpg)
- 発売日: 2015/11/03
- メディア: Blu-ray
7. 冨田恭彦『柏木達彦の哲学革命講義』
さて、哲学に戻ります。 デカルト以降、原子論的自然観を背景にして、観念論が立ち上がりました。観念論とは、わたしたちが見ているのは物質そのものではなくて、物質が感覚に反映されるときに生じる観念だという考え方です。 その観念論の変遷をわかりやすく書いているのが、この本です。対話形式で読みやすいのでおすすめ。
8. ベルクソン『思考と動くもの』
観念論以降、「世界は物質の連鎖でできている」とする唯物論と、「物質は認識できないのだから、観念について考えなければならない」とする観念論とが対立してきました。 これらを、時間の概念を見直すことで乗り越えようとしたのがベルクソンです。 この本は、そのベルクソンの晩年の講演集で、エッセンスが凝縮されています。

- 作者:アンリ・ベルクソン
- 発売日: 2013/04/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
9. ジル・ドゥルーズ『記号と事件』
ベルクソンの哲学を「差異」の概念をもとに再構築して、それを敷衍してきたのがドゥルーズです。ドゥルーズは、ノマドや分人など現代にも影響を与える概念を多く残しています。 この本も晩年のインタビュー集なので入門に最適です。

- 作者:ジル ドゥルーズ
- 発売日: 2007/05/01
- メディア: 文庫
10. ドゥルーズ&ガタリ『千のプラトー』
ドゥルーズの仕事のなかでもっともおもしろいのが、ガタリとの共著だと思います。 特に『千のプラトー』は、世界を記号の形成と解体として描き直す現代の旧約聖書のような壮大なもので、部分的にでも読む価値はあります。

- 作者:ジル・ドゥルーズ,フェリックス・ガタリ
- 発売日: 2010/09/03
- メディア: 文庫

- 作者:ジル・ドゥルーズ,フェリックス・ガタリ
- 発売日: 2010/10/05
- メディア: 文庫

- 作者:ジル・ドゥルーズ,フェリックス・ガタリ
- 発売日: 2010/11/05
- メディア: 文庫
まとめ
めっちゃ教養っぽいまじめな選書になりましたが、どんな専門の人であれ、みずからを相対化し、傲慢にならず謙虚でいつづけることは大事だと思うので。膨大な知のネットワークのうえに大学の授業があることを知っておくのはいいことだと思います。
この中の一冊でも手にとってみて貰えるとうれしいです。